排便障害の原因
便失禁では、便が不適切な時に出るのが問題ですが、
今度は便が出なくて困るという、一見正反対の問題です。
しかし、排便の過程全体が上手くいくことが大切ですから
表裏一体をなす問題ともいえます。
直腸瘤を例にとりましょう。直腸の前の壁が弱いので、
便がそこにトラップされて出せません。
また、直腸に戻るの便意が起こる、
そしてトイレにいっても出ないのでストレスになります。
このような人が少し肛門が緩ければ、容易に便失禁の症状を伴います。
便が出にくいといえば、便秘時の固い便がいくらいきんでも出ない状態が、
一つの典型例といえますが、
少しずつ便失禁する人たちは、
排便障害があるか、
直腸に送られてくる便の量とタイミングの異常があるはずです。
いずれにせよ、便秘は便秘で問題には違いありませんから、
排便障害について述べてみましょう。
適切に排便できるためには、
@内括約筋が緩んで肛門内圧を下げ、
A直腸肛門角を鈍角にして、便を通りやすくし、
B直腸内圧を便が形状を変えて肛門を通過できるだけ上げた状態を
C全ての便が完全に出るまで維持する必要があります。
アメリカのデータですが、三次病院にくるような慢性便秘の患者さんの
半分は閉塞性排便障害を伴っています。
この閉塞性排便障害というのは、排便しようといきんでいるのに
肛門が緩んでくれない状態を指します。
ここで、排便障害をとるために、色んな方法が考えられ試みられました。
これらは、大きく分けて便が漏れない機構を壊す方向と、
直腸と肛門のちぐはぐな動きを整えようという方向に分かれます。
では、壊す方法を挙げてみましょう。
括約筋の収縮力を奪う方法として
その原因が括約筋が異常に高度に収縮したまま、緩まないためだという考えから、
括約筋を切れば、便が容易に出るようになるだろうと考えた人たちは
括約筋を切ってみました。
最初の試みは多くの成功をおさめたので、その後、多くの外科医が試みた結果
この方法は10−30%の患者さんたちには有効だということで落ち着きました。
また、薬を使って括約筋を緩めようという試みもあります。
ボツリヌスという細菌が作る毒素は筋を収縮できなくする力があるので、
これが使われています。直腸瘤を伴う排便障害の患者さん14人に対して
外肛門括約筋にその毒素を注射したところ、9人で症状の改善が得られ、
直腸瘤が縮小したという報告があります。
便が漏れない機構として直腸肛門角があります。
これを壊すために、恥骨直腸筋を切断する方法が試みられました。
さて、直腸と肛門の動きを整える方法ですが、
これは、唯一つ、バイオフィードバックです。
便失禁の治療としても有名ですが、排便障害にも有効です。
結果的には有効なのですが、作用機序がはっきりしないことが、
少し腑に落ちない点です。